- 監督 :
- マイケル・フェイファー
- 特に目立つ人たち :
- ケイン・ホッダー
- おれが観たあらすじ :
- エド・ゲインに影響を受けたホラー映画。
そしてエド・ゲイン。
ついにあのエド・ゲインが、単体で映画化されるっつーことで、なまら期待して観てみたよ。
このパッケージに、おれのテンションもうなぎのぼりさ。
これがあれだろ?
殺した人の皮膚ば全部剥がして、自分の舞踏会用ドレスにしたってやつ。
イカレるのもたいがいせぇよ、おまえ……
『エド・ゲイン』観賞履歴 & 感想のまとめ。
- 第1回目観賞 : “ 本当のエド・ゲイン ” は何処?
ん~……
しかしィ~……
イマイチッチングぅ~!!!!
結論から先に言ってみた。
想像より全然エグくなかったし、グロくもなかった。本になって、もはや全世界を震撼させ、映画界にも影響を与えまくってるシリアルキラーを扱ってる割に、まるで残酷さっていうのが全然伝わってこなかった。
すこぶる残念。
常に結果のみ。プロセスがついてきてない。
たとえて言うなら、偉大な芸術家の話が聞きたいのに、その作品を見せられたっていう感じ。もうえっらいことになってる傷を見て “ どうしたの? ” って訊いたら、何針縫ったか教えてもらう感じ。
まあ、これが映画の倫理っつーか、わりと規制なしでだれもが観れる映像の倫理規定内でのギリギリっていう線なのかもしれんけど、酷さに欠けるかなといったところ。
快楽殺人とか連続殺人の話となれば、手口の酷さとか行為の凄惨さよりも、その内面が重要なはずだ。すっげぇ入り組んでるのか、それともいたってシンプルなのか。背景とか経緯。
とはいえ、映画だ。
ドキュメンタリーな感じで作ってくれてるのかと思いきや、ただの映画。あらゆる本に登場するエド・ゲインなだけに、かなり期待した。だけに、落胆も大きかった。
これ系の快楽殺人とか連続殺人の犯人を追った映画なら、ヘンリー・リー・ルーカスについての『ヘンリー/ある連続殺人鬼の記録』だな……って、この映画の話をしよう。
人物としての最強は『テッド・バンディ』になるのかな……
ん? もしかしておれ、テッド・バンディとゴッチャになってねぇか?
まいっか。
『エド・ゲイン』の話だよ。
自分のための “ エド・ゲイン ” 豆知識
- 首のない全裸の女性が逆さ吊りになっていた。肋骨から股間までが引き裂かれ、性器が切り取られていた。テーブルの上に数個の首が転がり、表情のない目が虚空を見つめていた……『マインドハンター』 元FBI捜査官ジョン・ダグラス著
- 自宅:人肉シチューの入った頭蓋骨。フライパンの上には摘出された心臓。靴箱には9人分の女性器と鼻。9つの生首。冷蔵庫には内臓。椅子には剥がされた皮膚。
- 『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルのモデル。
- 経済的に豊かな幼少時代を過ごし、学校の成績は平均的だったが、読むという能力では群を抜いていた。
- 母親は異常なほど宗教的に厳格で、父親は、妻の尻に敷かれたアル中。
- 1984年、1958年に心神喪失と認定されて収監された精神病院にて呼吸不全で死去。
いやぁ~、こいつ……マジでたまんねぇ。
いやはや、それはいいとして、ホラー映画色がかなり濃い。
スプラッターっていうんだっけ、こういうの?
煽りに煽って、恐怖心を逆撫でするんだな。逆撫でしすぎて冷めてくる。
やっぱり『13日の金曜日』みたいな撮り方がされてるのかな。おれとしてはそういう観え方だった。エド・ゲイン役の人もジェイソンに見えてしかたねぇ。
それでいてファンタジー。
その人のイメージが映像となって現実の絵とゴッチャにするっていう見せ方。
いやはや、こちらエド・ゲインは、実際そういう人格だったらしいので、映画となればそうなって当然の作り方かなとも思える。
極度のマザコンで、母親を心底憎んで嫌いつつも、母親大好きみたいな。死後も、家のベッドで保管してたとかしてないとか。想像と幻想と現実の境界線が曖昧になってるらしいのだな。
お告げというか、母親の影と重なって、そういうので人を殺してたっていう話らしい。ただの衝動に近いと思うけど、統合失調症ってやつも入ってるのかな。
でも、実際のエド・ゲインにどれほど近づけてたのかっていうのは、かなりの疑問。
とはいえ、あくまで映画だ。ノンフィクションの快楽殺人犯エド・ゲインに迫るドキュメンタリーっていうわけじゃない。
ともすれば、やっぱり映画なんだよな。
本で読んだエド・ゲイン像とは、あまりにもかけ離れてる気がする。
まま、どっちが本当なのかっていうのは、実際の人物に会えたわけじゃないからわかんけども、やっぱり本のほうが実像に近いのではないかなと思うわけ。
ただ、ネクロフィリアっていう部分はなかった。
場面の行間としてそういうところはあったかもしれんけど、具体的にはなし。
殺した女の全身の皮膚を剥がして、それを装飾品やらマスクやら生殖器やらに加工。それらを身につけて月夜に踊ったっていうのは映画でもシーンとして出てきた。
それも結果だけの露出で、皮膚を剥がすシーンとか加工するシーンとかはなかった。
そのへんのイカレ加減、どの方向性で変態だったのか、いろんなところがなんか微妙にポイントがズレてる気がする。
だったら、皮膚を剥がしながらヨダレを垂らすとか、まんこをくり貫く際、すっげぇ間近にまで迫って解体するような、もっともっとド変態な迫力が欲しかった。
いやはや、そっちのほうが実像と離れてるのかもしれんけど、あれではなんか、ちょっと興味本位でバラバラにしてみたかったから、バラバラにしてみたっていうぐらいの印象しか受けなかったわけ。
そうそう、それを物語る食い違いをこの映画に見た。
予備知識として、エド・ゲインは知能障害というか、多少知能的に一般的な範囲で劣ってるっていうことだったんだけど、映画のなかでは全然違った。むしろ、切れる男だった。
それは、エド・ゲインが墓荒らしをしてたっていう部分。
お墓から死体を掘り起こして持ち帰り、それをバラして、終わったら返してまでいた。仲間もいて、そいつがおかしなことを言いだすと、そいつをなんのためらいもなく、しかもなかなかの酷さで殺した。Y 字にわかれた木の幹に頭を押っつけて挟んだあと、思いっきり振りかぶった金属のスコップで額をぶったたきやがったよ、あいつ。
あくまで死体を解体してただけということだった。
当時は、“ 死体を解剖してはいけないなんて、そんな法律はない ” とのこと。
わかっててやってたわけだよ。衝動でも妄想でもなく、ましてやお告げでも幻覚でもなんでもないってことになるわけだ。
まま、たしかにな。本当にただのアホだったら、そんなにそんなに人間殺せるわきゃねぇんだわ。人殺しなんてたぶん、社会的にもっともリスクの大きな快楽だ。
って、なに? これって実際にはどっちが正しいんだ?
登場人物に関しては、特に興味なし。
エド・ゲイン役の人も特に怖いわけじゃなかったし、迫力があったわけでもない。場面によっては、人のよさそうな田舎のおっさんだった。そこがシリアルキラーの恐ろしいところでもあるんだろうな。
警官も上司も仲間たちも被害者も、これといって際立ってなかった。
主役はあくまで “ エド・ゲイン ”。
……であってほしかった。
エド・ゲインのドキュメンタリーとしては失格。
冒頭とか場面の切り替えとかで、サブリミナル効果みたいに被害者の被害の実像とか、その凄惨さを物語る残骸とか現場とか、本人の肖像とかの写真が挟まれてはいるけど、映画の予告みたいだった。むしろ、なんかの広告で、またエド・ゲインを扱った本でも出るのかよっていうぐらい、うすっぺら。
あれらの写真なら、写真だけを追ってくれたほうが楽しめる。でもそれなら、この映画は観る必要がない。
映画としては、ホラー映画の中堅といったぐらい。
ちょっとグロテスクな映像が入ってて、殺人鬼がいて、殺される人がいて、被害者を思う人がいて、善と悪がはっきりしてる。
快楽殺人というか連続殺人鬼というか、こういう映画特有の、観ていくにつれて善悪の境界線がどんどん曖昧になってくっていう違和感みたいのがまったくない。
だれのどこがイカレてるのかがはっきりしてる。
そうね。
エド・ゲインに興味があるなら、本で読んだほうがいいかな。
ただ、どっちが正しいというか、エド・ゲインの実像に近いのかが疑問。
こっちが近いなら、この映画は観るべき。
そうじゃないなら、本とか関連映画を観たほうが、ずっとエド・ゲインを知れるし、おもしろい。
キャスト詳細情報
- タイトル :
- 『 Ed Gein: The Butcher of Plainfield 』
- 監督 :
- マイケル・フェイファー (Michael Feifer)
- 製作 :
- マイケル・フェイファー (Michael Feifer)
- 製作総指揮 :
- バリー・バーンホルツ (Barry Barnholtz)
- 脚本 :
- マイケル・フェイファー (Michael Feifer)
- 撮影 :
- ロベルト・シュエイン (Roberto Schein)
- 出演 :
- ケイン・ホッダー (Kane Hodder) / エド・ゲイン (Ed Gein)
- エイドリアン・フランツ (Adrienne Frantz) / エリカ (Erica)
- プリシラ・バーンズ (Priscilla Barnes) / ママ (Vera 'Momma' Mason)
- ショーン・ホフマン (Shawn Hoffman) / ボビー・メイソン (Bobby Mason)
- マイケル・ベリーマン (Michael Berryman) / ジャック (Jack)
- 新 : 『パフューム ある人殺しの物語』(Perfume : The story of a murderer) / アラン・リックマン、ダスティン・ホフマン
- 古 : 『消えた天使』(The Flock) / リチャード・ギア、クレア・デインズ