『消えた天使』(The Flock) / リチャード・ギア、クレア・デインズ

監督 :
アンドリュー・ラウ
特に目立つ人たち :
リチャード・ギア
クレア・デインズ
ケイディー・ストリックランド
ラッセル・サムズ
マット・シュルツ
おれが観たあらすじ :
イカレた性犯罪者を追いつめていくことで、自分のなかのイカレた部分が浮き彫りになっていくという観察者という肩書きを持った男の物語。

 『スッキリ!』を見ながらの晩御飯のあと、“ もう今日はなにもしない! ” って決めて、どうせなら自分が見たがってるやつってことで寝るまでに観たのだよ。
 カルビーはポテトチップの新しい仲間 “ ポテトサラダ味 ” を食べながら。そう、食べながら……


『消えた天使』観賞履歴 & 感想のまとめ。

  1. 第1回目観賞 : 犯罪だけが “ 狂気の沙汰 ” ってわけじゃない。人間の起こす言動は、そのすべてがそう。きっと愛も。

 ん~、この映画 ──── い~や、こういう映画全般じゃ、もう感想とかっていう問題じゃないよな。
 感想っていうと、なんかもうホント思いっきり主観的な言葉になってしまうから、要は “ おもしろい ” か “ そうじゃない ” かの問題でしかなくなる。

 でも、こういう社会派ドラマっつーか、そういう犯罪だとか時代だとか背景的なものを扱う映画の場合、主観だけで観ちゃいけないと思うわけ。
 作り手側から提示されてるであろういろいろな考えさせられることを考えながら、それを自分自身の経験やなんかと交ぜ合わせつつ、最終的には、自分自身のなかの答えと、そのテーマに沿った答えを導きだすべきなのかなと。あるいは、判断。

 感想っていうだけ観れば、“ そうじゃない ” っていうほうなのは言うまでもないな。
 “ 性犯罪 ” には、なぜか昔から興味ありありで、本とかもいろいろと読んだ。しかもアメリカのものだと、FBI とかがしゃしゃり出てくるし、心理学的な見地でものを言う人が多い分野でもある。
 なぜかまたブームなのか、最近映画にもなった『エド・ゲイン』だって性犯罪の要素が多分に含まれてる。ネクロフィリアで、女性器に異常なまでの執着を示したらしいのだな。
 ファッションも著しく変だったらしい。殺した女の皮膚をはいで服にしたりアクセサリーにして、月夜に一人、それを身にまとい踊り狂ってたらしい。
 まあ、別の言い方をすれば、今流行りの “ アキバ系 “ ともいえるかもしれない。コスプレに近い。人肉を食ってたなんていう話もある。
 で、そういった関連書籍はめっちゃめちゃ出てるし、なかでも捜査官なものはかなり読みやすくておもしろかったりもする。
 いろいろと分析癖を持った人たちが参戦する分野なのかね、性犯罪って。
 だからかもしれないな、おれが性犯罪に興味津々なのも。

 でも実際、本でも映画でも、インターネット上でも実際の写真が掲載されてたりするけど、そういう人たちは、ごくごくありふれた見た目をしてる。
 貪欲さと目的への執着っていうことを考えてみても、エド・ゲインなんて、言葉をへらせば “ 善人 ” なんていう印象だったらしい。エドモント・ケンパーなんざ、ちょっと大きな普通のおっさんだ。


 ぶっちゃけ、メインキャストに挙がってる3人の “ 名前 ” で観た。
 リチャード・ギアは、昔っからエロくて素敵なナイス・ミドル。『アメリカン・ジゴロ』からなにかと追いかけてしまう俳優さんだ。
 クレア・デインズはやっぱ、時間さえあとから追いかけるほどの人気だった当時のレオナルド・ディカプリオと共演した『ロミオ&ジュリエット』でしょうな。あれでもう死ぬかと思ったぐらい可愛いっつーことで、いろいろ追いかけはじめた。
 アヴリル・ラヴィーンは、単に好きっていうのがほとんどだけど、興味本位。音楽は好きだ。『 The Best Damn Thing 』の “ Motherfucker princess ” の PV は、店頭で一時間ほどずっと見とれてしまってた。でもステージとスクリーンはまた別だよなと……

 おれが大好きなキャスト三人。
 おれが大好きなテーマ “ 性犯罪 ” 。
 絶対おもしろいはずだったのに、おもしいはずが楽しめなかった。
 まあ、平たく言うと、映画としてはつまんない。
 理由は、結末がまんま読めたから。
 でも、問題提議と定義のメッセージはなかなかだった。
 理由は、人間の潜在的なイカレっぷりと、性犯罪者とその観察者との問題が浮き彫りにされてたから。


 冒頭は意味がわかんなかったけど、ものすごく強烈だ。
 実際にはどうだったか?
 問題なのはイカレた性犯罪者か? それとも、監察官のほうか?
 おれとしては、後者の ──── いや、すべての人間のなかに眠る潜在的で突発的な狂気のことを叫んでるんだろうなと感じた。
 考えさせられたのは、そこ。

 はた目に明らかなイカレは、実際そうでもない。おかしなやつは敬遠される。だからそうそう害はない。
 でも、一見、あるいは社会人だったり大人だったりっていう肩書きのある人のそれは、目覚めるとかなりの害を及ぼす。経験や知識があればなおさらだ。隠れみのにできるし、する。
 映画のなかのセリフを拝借さしてもらえば、“ それは突然やってくる ” っていうそのまんまのような気がするんだな。

 一番シンプルな表現としては、“ キレる ” ってやつだ。
 いっつもキレてるやつと、いきなりキレるやつ。
 どっちが危ないかっつったら、後者だろう。危険を孕んだやつのほうがモア・デンジャラスな気がした。


 なんとなく客観的に映画を評価してみる気になったので、してみる。
 一般ピーポーで映画評論家を気取る人たちによく見るどことなく偉そうな感じで、おれも話してみよう。

 登場人物はすげぇ感情的だけど、映画の展開はすごく論理的。シーンの構成がしっかりしてる。
 カメラのアングルもすごくうまく移動してる。臨場感が出てると思う。
 ねっとりしたシーンでは、ゆっくりとカメラがそこに渦巻く感情の糸を引くように移動し、暴力や激昂するような迫力のあるシーンでは、少し引いた位置からのアングルだったりする。
 カメラワークが実に巧妙。

 演技としては、やはりリチャード・ギア。自分で “ 得意だから ” と話しちゃうだけのことはある。事実だ。
 でも、感情的になるシーンでの肉迫した危機感に今一歩踏んばりが足りないように感じた。怖くない。品があるのか、いい人っていうお顔立ちのせいか、『プリティ・ウーマン』や『 Dr.T と女たち』などでの “ 女に優しい ” というイメージが強いせいか、どこか緊迫感に欠ける。
 どうせならハリソン・フォードかな。

 クレア・デインズは、スクリーンで映えるなと。やっぱりいるだけで絵になる。
 年を重ねて、当時の可愛らしさから美しさへと昇華してる。あの美貌はまぎれようがない。
 演技も円熟の域。
 舞台というよりはやっぱり映画で、大げさな芝居じゃなくて、自然な演技が実にうまい。感情をたたえた表情はまだ乏しいものの、しぐさや口調、声のトーン、言葉の抑揚で伝わってくるものがある。
 今後がますます楽しみな女優さんの一人だ。

 アヴリル・ラヴィーンは、なんとなく予想どおりだったかな。
 見た目で判断したのは申し訳ないけど、やっぱりああいった類いの役どころかなと。
 ただ、音楽シーンでの子供らしさというか、無邪気さというか、元気いっぱいにはしゃぐ女の子という印象ではなかった。むしろ、色香漂う娼婦ばりの色気をかもしだしてた。そこはさすが。
 欲情した。
 ただ、やっぱり芝居はどうかな。
 意外にもスクリーンでは見映えしない。歌ってるときのアヴリル・ラヴィーンは、あんなにもきらきら輝いてるのにな。
 なんだろう?
 実はけっこうアヴリル・ラヴィーンみたいな顔立ちというか雰囲気って、ハリウッドの映画界では、けっこう飽和状態なのかもね。映画のなかでは、存在感としてあまり目立たない。
 で、あの役の潜在的な感情を表現してたのは、結局、その場面を見せるカメラワークのおかげかなっていう印象が色濃い。
 でもストリートの出っていうことらしいから、もっと等身大の役をやってもらえたらと思う。新たな才能が開花するかもしれないっていう期待を胸に。

 そしてやっぱり、映画の展開的にも役どころでも、かなりのキーとなるケイディー・ストリックランド。
 あの表情はもう、芝居として “ 自然 ” の域。“ スーパーナチュラル ” とも言ってみよう。
 映し方のうまさもあるだろうけど、実に素晴らしい。
 でもおれは騙されないぞ。


 とまあ、わかったような口をきくのはこんぐらいにして、もうまとめよう。

 映画としても記録としても、何回も何回も観たくなるような映画ではない。
 でも、一度は観ておいていいとも思う。
 性犯罪の実体と、人間のなかの潜在的な狂気。
 知識というか、一つの事実というか、一つの現状として。
 教科書とは別にもらう資料集みたいな感じだな。

 作る側は事実をドーンを見せつけて、あとは観る側がそれぞれに考えたり感じたりしてくれよなみたいな映画。
 これもまた多いね、最近。

 やっぱり、人の目に見える人間の姿なんてのは、本当にほんのひとにぎりであって、そのありとあらゆる欠片の一つひとつが孕んだもの、そこになにが隠されてるのかっていうのを見極めてこそ現れるものらしい。
 氷山の一角。いや、宇宙の星。
 人間の心は、合わせ鏡のような回転ドアだ。
 ちょっとまわせば、それまでの景色と同じようでまた違う景色が見えはじめ、その奥にはまた似たような景色が広がってて、それが無限に繰り返される。

 一人の人間を知るには、その人の過去を覗き、その百倍もの数の人間と、そこにあった関係と関わり方を知る必要があるんだなと思い知った。


キャスト詳細情報

タイトル :
『 The Flock 』
監督 :
アンドリュー・ラウ (Wai-keung Lau)
製作 :
アンドリュー・ラウ (Wai-keung Lau)
フィリップ・マルチネス (Philippe Martinez)
ジェネット・カーン (Jenette Kahn)
ラリー・ラパポート (Larry Rapaport)
アダム・リッチマン (Adam Richman)
エリー・サマハ (Elie Samaha)
製作総指揮 :
デヴィッド・ゴートン
カリーヌ・ベール (Karinne Behr)
ロバート・レヴィ (Robert L. Levy)
ピーター・シュウェリン (Peter Schwerin)
リュック・カンポ (Luc Campeau)
脚本 :
ハンス・バウアー (Hans Bauer)
クレイグ・ミッチェル (Craig Mitchell)
撮影 :
エンリケ・シャディアック (Enrique Chediak)
衣装デザイン :
デボラ・エヴァートン (Deborah Everton)
編集 :
マーティン・ハンター (Martin Hunter)
トレイシー・アダムズ (Tracy Adams)
音楽 :
ガイ・ファーレイ (Guy Farley)
出演 :
リチャード・ギア (Richard Gere) / エロル・バベッジ (Erroll Babbage)
クレア・デインズ (Claire Danes) / アリスン・ラウリー (Allison Lowry)
アヴリル・ラヴィーン (Avril Lavigne) / ベアトリス・ベル (Beatrice Bell)
ケイディー・ストリックランド (KaDee Strickland) / ビオラ・フライ (Viola Frye)
レイ・ワイズ (Ray Wise) / ボビー・スタイルズ (Bobby Stiles)
ラッセル・サムズ (Russell Sams) / エドマンド・グルームス (Edmund Grooms)
マット・シュルツ (Matt Schulze) / グレン・カスティス (Glenn Custis)
クリスティーナ・シスコ (Kristina Sisco) / ハリエット・ウェルズ (Harriet Wells)
ドウェイン・バーンズ (Dwayne L. Barnes) / ヴィンセント・デニソン (Vincent Dennison)
エド・アッカーマン (Ed Ackerman) / ルイス・ケスラー (Louis Kessler)
フレンチ・スチュワート (French Stewart) / ヘイズ・オウンビー (Haynes Ownby)

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